古来から身近にあった香り。龍脳の魅力をご紹介!
お香の世界で三種の神器と呼ばれる「白檀・龍脳・丁子」
この3種類の原料は、古来から世界中で愛されていただけでなく、複数の香りをひとまとめにする力があります。
天然の龍脳は、とても稀少な素材だったこと、またその形状が脳みそのような形をしていたことから「龍脳」と名付けられました。
中でも、中国や欧米での人気が高く、世界三代美女の楊貴妃も愛用していたことから、その素晴らしさは伝わりますよね。
龍脳には、抗菌作用や鎮痛作用があり、精油は痛み止めの原料や防虫剤の素材としても使用されていました。
また、日本では古くから墨の香料として使用されており、日本人の生活に密着していた素材でもあります。
しかし、龍脳は高値で取引されること、マホガニーの代用品として乱獲されたのが原因で、現在ではワシントン条約で輸出制限がされています。
龍脳だけ他の素材と違い、白い粉末状なのは科学的に作られた原料だからですね。
今回は、三種の神器として長く愛されてきた龍脳についてご紹介していきます。
お香の龍脳の原料は?

龍脳 別名:ボルネオ樟脳
産地 ボルネオ・スマトラ諸島
読み方 りゅうのう
龍脳は、ボルネオ・スマトラ諸島が原産国です。
天然の龍脳は、龍脳順の木の幹の切れ目などに発生した樹脂が固まったもので、形状が龍の脳みそに似ていること・稀少な素材ということから、龍脳と呼ばれるようになりました。
また、クスノキの木片から科学的に抽出した樟脳に香りや成分が似ていることから、ボルネオ樟脳と呼ばれることもあります。
現在では、天然の龍脳は輸出入が禁止されているので、樟脳と同じように科学的に抽出されたものが龍脳として使われていることが多いです。
龍脳のみ、他の原料と違うように見えるのは、このような理由からなのですね。
どんな香り?

龍脳は、ツンとしていますが、清涼感がありスッキリとした香りです。
他にも、防虫剤に使用されている樟脳に似た香りとも言われますが、龍脳の香りの方が甘くて柔らかい香りなのが特徴です。
また、墨の香りとも表現されるように、書道の墨には香料として龍脳が使用されています。
書道の時間に墨を擦った時、部屋中に爽やかな香りを感じたのは、香料に龍脳が含まれていたからなのですね。
しかし、爽やかで清涼感が強い龍脳は、多量に加えるとひんやりとした香りになってしまうので、使用する時は少なめに調合することがおすすめです。
龍脳の効能

お香の原料には、各種効能がありますが、龍脳で得られる効能や効果をご紹介します。
鎮痛作用
龍脳の香りには、強い中枢麻痺作用があると言われています。
龍脳樹の葉の香りを嗅いだボルネオ島の住民の頭痛が治ったことから効能が発見され、龍脳の精油は痛み止めとして使用されてきました。
主に、頭痛や歯痛に効果があると使われていましたが、胃の痛みにも効果があるとして漢方薬や気付け薬の原料としても含まれています。
また、ユーカリなどの精油と合わせて鼻詰まり改善の薬として実験されていたこともありましたが、これは香りだけでなく鎮痛効果も期待していたのかもしれないですね。
龍脳の効果

ここまで龍脳の効能をご紹介しましたが、龍脳には他にも効果があります。
防虫対策
大航海時代に藿香の葉を防虫対策として使用していたように、強い香りは虫食い防止に効果があります。
龍脳も強い香りを持つことから、古来より衣類の香り付けや防虫対策のために使用されてきました。
現在では、防虫対策には樟脳を主に使用しますが、樟脳が作られる前は龍脳がメインで使用されていたのかもしれないですね。
楊貴妃が愛した龍脳

龍脳は、中国やヨーロッパで人気が高く、龍脳という名前も中国で付けられました。
日本へは奈良時代に伝わりましたが、中国ではその前から使われていたことから、いかに愛されていたかわかりますよね。
その中でも、龍脳を愛していたのは世界三大美女の楊貴妃でした。
楊貴妃は、38歳の時に命を落としましたが、彼女が亡くなった後に発見された匂い袋に龍脳の香りが残っていたという史実があります。
香りが残るほど貴重な龍脳をたくさん使用していたことからも、楊貴妃が龍脳を愛用していたことがわかりますね。
この匂い袋は、楊貴妃のお墓を移設する時に偶然発見されたそうですが、愛した人に自分の存在を忘れさせないために、匂い袋を遺したのかもしれません。
龍脳の香りを生活に取り入れてみませんか?
今回は、三種の神器である龍脳について、詳しくご紹介しました。
龍脳は、現在は科学的に作られたものが主流になっていますが、元々は他のお香の原料と同じように天然の素材が原料でした。
寺社や仏閣を参拝した時、茶席に参加した時、ほっと気持ちが落ち着くのは、現在でも線香やお香を使用しているからです。
自宅で香りに包まれて癒されたい方、自然な香りが好きな方、オリジナルの香りを楽しみたい方。
ぜひ実際の香りを楽しみながらお香作りをしてみませんか。
